セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.72『マクドナルドについて』

政治・経済

2005-08-15

 日本マクドナルドホールディングスが9日発表した05年12月期連結中間決算は、売上高が前年同期比5.3㌫増の1576億円となったものの、利益が大幅に悪化した。経常利益は前年同期比77.4㌫減の5億8900円となり、税引き後の最終利益も57.5㌫減の4億7400万円だった。4月から導入した100円メニューや500円セットの拡充で、客1人当たりの売上げ(客単価)が下がったため、大幅減益となった。

 とはいえ、原田泳幸社長は会見で「客数を犠牲にした成長戦略は逆方向だ」と述べるなど、あくまで集客を最重視する戦略を続ける構えで、「100円メニューなど低価格商品で来客数を増やし、メニューの多様化で、リピーターが、より高い商品を買ってくれれば客単価も上がると期待している」とのことだ。

 かつてデフレ経済の“勝ち組”と言われたマクドナルドだが、いまや利益を吐き出してでも売上げを維持しようとする様は、どこかの業界と酷似している。低価格商品で呼び込んだ客が、リピーターとしてより高い商品を買ってくれるだろうとの皮算用には疑問符を付けたくなる。二重、三重価格を設けて安売りを続けても、現金客はその名のとおり現金なもので、値上げをすれば即、他の安売り店へ移動してしまう。気前良く景品や割引券をばら撒いても、キャンペーンが終わればハイ、サヨウナラ─こんな経験をいやと言うほどしている我々としては、「客数を犠牲にした成長戦略は逆方向」との考えは、もはや時代遅れのような気がするのである。結局、安売りで集めた客はどこまで行っても価格でつなぎとめて置かなければならず、客単価アップには決して貢献しないのだ。

 マクドナルドの話題をもう一つ。今月1日、同社はアルバイトの勤務時間と社員の時間外勤務について、これまで30分未満の部分を切り捨てて計算し、その分の賃金を支払っていなかったと発表した。厚生労働省は月間の総労働時間全体から30分未満の部分の切り捨ては認めているが、同社は毎日の労働時間から30分未満の分を切り捨てていたため、アルバイトや社員約10万人に、過去2年間分の未払い分を返還するという。

 今後、同社は、労働時間を1分単位で計算することにしたそうだが、仮に時間給780円(高校二年の長男がマックでバイトしており、その時間給が780円也)の1分ぶん13円を10万人の社員全員に支払うとすると、一日130万円の人件費増となり、一年間で4億7450万円のコスト負担が発生する。奇しくも前述の最終利益とほぼ同額である。

 マクドナルドが、いままでより高い人件費を支払うことを余儀なくされてもなお、安売り戦略を推し進めるようであれば、爆発的な売上げ増加を実現するか、劇的な客単価向上を達成しない限り、赤字転落は避けられないということになる。

 ついこの間まで、ガソリンスタンド業界が羨望の眼差しで見つめていたファーストフードの巨人は、いま、大きな試練に直面している。その原因は、先の見えない安売り戦略と、思いがけない人件費の増加というダブルマック、じゃなかった、ダブルパンチである。愛知県には、このマックを併設したエクソン・モービルの大型スタンドがあるが、まさにお似合いのカップルだ。せいぜい仲良く安売り量販に励むがよろしかろう。

 幸いにも、人件費については、ガソリンスタンドにはセルフ化という有効な対処策がある。固定化だの、付加価値だのという“妄想”を抱くことなく、採算性を重視したローコスト戦略を忠実に遂行することが、マクドナルドの轍を踏まないための最善策であると確信している。

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