セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.77『農協スタンドへの提言』

政治・経済

2005-09-26

 衆議院選挙は小泉・自民党の圧勝におわり、郵便3事業の民営化が事実上決定した。今後、残り1年足らずの任期で、小泉首相が国内外の諸問題にどの程度取り組めるのかわからないが、小泉構造改革の次なるターゲットともっぱら噂されているのが、農協だ。

 今年の4月に政府の規制改革・民間開放推進会議は、農協の金融・共済・経済事業を郵政3事業と同様に見立てて分割の必要性を訴えた。当然、自民党の農林族議員から猛反発を受けたらしく、“郵政優先”ということで引っ込められたようだが、同会議が7月にまとめた中間報告の原案では、農協改革について、資材購入や農産物販売などの経済事業が高コスト体質であると指摘。金融、共済、経済の3事業の組織分割や、不採算部門からの撤退などを検討するよう求めている。

 実際、金融・共済事業であげた利益を本来業務である農家指導、農産物販売といった経済事業の赤字分の穴埋めに充てているのが農協の経営実態だと言う。とはいっても、農協は民間団体なのだから、政府からああしろこうしろと言われる筋合いはないとの意見もあるだろう。しかし、かつての住専問題のように、農協が本業を逸脱して大損を出した挙句、公的資金でその穴埋めさせるなんて事がまた起きたりすると、農協解体論は一気に加速するかもしれない。

 さて、前述の中間報告では、「高コスト体質の経済事業」の一つとしてガソリンスタンド事業もヤリ玉に上がっている。全国に約5千ヶ所ある農協系スタンドの約六割が赤字というデータもある。その農協系スタンドが、最近、各県でセルフ化に積極的に取り組んでいる。当然、コスト削減策の一環としてなされているのだろうが、私は、農協系のセルフスタンドには、一般のガソリンスタンド・チェーンにはない素晴らしい可能性があると考えている。

 農協といえば、その取扱商品はまさに「ゆりかごから墓場まで」。米、野菜、肉などの農産物はもちろん、生命保険や自動車保険などの各種保険、電化製品や住設機器から住宅・不動産のたぐいまで、およそわたしたちの生活に関わりのあるものは何でも扱っている。冠婚葬祭サービスだってある。これだけの“油外商品”を自前で調達できるガソリンスタンドは、農協系スタンドしかない。多くのセルフスタンドが油外収益に苦しんでいるが、農協系スタンドは、やり方次第で他社が羨むほどの油外収益をあげる可能性がある。

 また、Aコープとのタイアップによるローコスト・セルフスタンドの出店も可能で、相乗効果によって高いコストパフォーマンスが期待できる。しかも、全国47都道府県にあまねく展開する店舗網を、縦割りの垣根を越えて統一されたセルフシステムで結べば、ローコスト・オペレーションはより強化されるだろう。

 …と、ここまで書くと、いい事尽くめなのだが、これらはすべて“可能性”の範ちゅうの話であり、実現はなかなか難しそうだ。私も数回、農協の事務所を訪ねたことがあるが、あそこはまさに“役所”そのもので、いま述べたような“前例のない事”を実現させるような風土はまったくと言って良いほど培われていない。その意味では、構造改革の次なるターゲットにされるのも、むべなるかなである。ローコスト・セルフシステムによって、燃料部門を不採算部門から高採算部門へと変身させることができれば、昨今噂される農協分割論にも一矢報いることになるのではなかろうか。所詮は余計なお節介でしょうけれども…。

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