セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.874『急上昇,急降下』

社会・国際

2021-12-06

 先週のニュースは,連日「オミクロン」で持ちきりだった。日本でも感染者が確認されており,緊迫度が高まっている。“振り出しに戻るのか”といううんざりしたムードが漂い始めているが,まだこの新たな変異株がどれほど重症化リスクや致死率を有しているかははっきりしておらず,過度に警戒することを諌める専門家もいる。とはいえ,やっぱり用心するに越したことはない。ましてや,これまでのワクチンが通用しない(これもまだ真偽のほどは定かではないが)なんて聞けば,心配するなと言う方が無理だろう。

 オミクロン株の出現に,石油市場もすぐさま反応した。10月下旬に一時1バレル=85ドル台まで上昇したWTI先物も,現在は60ドル台後半まで下落している。米国が主要消費国を巻き込んで備蓄石油の放出という“脅し”をかけたことも効いているようだが,やはり,また世界経済が落ち込むかもしれないとの不安が,投資家たちに売りを促したと考えられる。それでも,OPECプラスは,2日の会合で,来月も予定通り小幅な増産を継続することを決めた。先行き不透明な情勢の中で,産油国と消費国との綱引きが続いている。

 GS業界も,先月後半から仕入れ価格は上げ止まりとなり,今月に入ってから毎日1.5~2円の幅で下がるという,滅多に経験できない急降下が生じている。あまりに急激な「マイナスG」がかかり,ハイになって,「安売りミサイル」のボタンを押しそうになるかもしれないが,去年の今頃に比べると,ガソリンも灯油もまだ20円以上高い。それに,産油国がせっかく手に入れた原油価格のグリップを,安易に手放すとは思えないし,また急上昇するかもしれない。ここは冷静になって,ガソリンは150円台,灯油は100円前後(いずれも税込み)の価格帯を維持できればと思っているGS経営者は少なくないのでは。

 少し前の調査だが,2019年にネットサイト『くるまのニュース』が約7千人を対象に行ったガソリン価格に関するアンケート調査では,高いと感じるレギュラーガソリン価格について,「120円/㍑以上」から10円刻みで「170円/㍑」までの6選択肢から質問したところ,「140円/㍑以上」が40㌫で最多で,次いで「130円/㍑以上」が22㌫,「150円/㍑以上」が20㌫で続いた。安ければ安いほど消費者は喜ぶと思いきや,闇雲に安くしても有難がられるわけではないようだ。

 ところで,今回に限らず,原油価格が高騰するたびにニュースに登場する業種のひとつが「銭湯」。正式には「普通公衆浴場」と呼ばれるそうだが,実は,終戦直後に公布された物価統制令によって,令和の御世となったいまでも,都道府県が料金の上限額を定めており,一番高い東京都で470円(大人)。したがって,今回のように燃料となる重油などが高騰しても,その分を価格に上乗せできないのだ。ただでさえコロナで客足が減っているところに原油高が直撃し,廃業する銭湯が急増すると見られている。

 それに比べれば,上がったら上がった分だけ価格に転嫁できるGS業者は,つくづく恵まれているなと思う。大抵の企業は,商品を値上げするに当たり「企業努力の限界」などと釈明をする。本当に“企業努力”すなわちコストの削減や業務の効率化を行なった末の値上げかどうかはさておき,やはり商品を値上げする際は,それなりに慙愧の念を抱きつつ行なっているように思う。一方,TVリポーターがGSの店長にマイクを向ければ,苦笑しながら“いや~大変ですわ”とよく意味の分からないコメントをするだけで,企業努力のポーズすら取ろうとしない。仕入れが上がったんだからしょうがない…まあ,実際そうなんだけれど,もう少しもがき苦しみながら値上げすべきじゃないかと思う。苦労して値上げすればそれだけ値下げにも慎重になる。そうやって,ある程度の相場変動には弾力的に対応できる「価格帯」というものを構築すべきではないか。企業努力をなおざりにして,安易に上げ下げしていると,そのうち銭湯のように,お上から上限価格を決められてしまうかもしれない。

 いまは暴落している石油製品価格だが,また急騰する可能性は大いにある。いま一番気がかりなのは3日に「ワシントンポスト」が報じた次のニュース。『米情報機関によると,ロシア軍はウクライナ国境地帯の4ヶ所に集結しており,新たに戦車などが配備された。米当局者は「ロシアは早ければ2022年初めのウクライナへの軍事攻撃を計画している」と警告。「計画には推計17万5000人の兵士から成る大隊100隊による広域行動が含まれる」と予想した』─。

 もし,プーチン大統領が引き金を引けば,世界経済は大混乱に陥ることは必至。それに乗じて中国が台湾に侵攻する可能性もあると警告する専門家も。その時原油価格は暴騰するのかはたまた暴落するのか─。やはり値下げは慎重に行なうべきだと思うのだが…。

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