セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.877『ポテトとミルク』

政治・経済

2021-12-27

 『日本マクドナルドは12月24日から30日まで,セットメニューを含めた「マックフライポテト」の販売をSサイズのみにする。12月21日に発表した。対象は全国の「マクドナルド」約2900店舗。31日の午前10時30分から販売再開を予定する』─12月22日付「食品産業新聞」。

 マックのポテトは北米から輸入しており,船便の経由地であるカナダ・バンクーバー港近郊での大規模な水害と,新型コロナウイルスによる世界的な物流網への影響により,輸入遅延が発生していることが,今回の措置の要因とのことだ。「マックのポテトのLとMが一週間お預けになる!」ということで,販売休止前日の23日には,全国各地のマックで,駆け込み需要による長い行列ができた。

 メディアは「ポテトショック」などと報じているが,そんな大騒ぎするようなことか?Sサイズを二つか三つ買えばいいじゃないか,と思ったのだが,実はこれなかなか巧妙な値上げ戦術なのだという。今回マクドナルドではバリューセットのポテトがSサイズに変更になる分,価格を50円値引きするのだが,ポテト好きのお客が物足りなさを感じてSサイズのポテトを追加で購入すると,量としてはLとMの中間ぐらいなのだが,支払い額は790円とこれまでのLサイズセットより50円高くなるのだそうだ。つまり,商品の供給が滞るという危機を逆手にとって,メニューをSサイズのみとして全体の販売量を抑制させ品切れを回避する一方で,余分に買う客に対してはちゃっかり割増料金を頂戴するというわけ。窮余の策と思えない。恐らく,こういう事態を予測して,以前から準備していた作戦だったのでは。

 コロナウイルスや気候変動,原油高,コンテナ不足などで,来年以降もサプライチェーンの混乱が続くことは間違いない。「売り切れました」と頭を下げるのは忍びない。だったら,合理的な範囲内で値上げをして需要を抑えつつ売上・利益を確保するという方法を取るのも一計である。「デフレ時代の優等生」と称されたマクドナルドだが,近年は新商品やセットで単価アップを図り,安価な「チーズバーガー」などの比率を落としているという。先週も書いたとおり「減収増益」が,ポスト・コロナにおけるトレンドになりつつある。だが一方で,商品が売れ残って困っている業界もある。

 『岸田首相は21日の記者会見で,牛乳や乳製品の原料となる生乳の消費がコロナ禍の影響で落ち込んでいる問題に触れ,「大量廃棄を防ぐため,年末年始に牛乳をいつもより一杯多く飲み,料理に乳製品を活用するなど,国民の協力をお願いする」と述べた。首相が特定の農産物の消費を呼び掛けるのは異例だ』─12月21日付「時事通信」。

 例年なら,年末年始は牛乳需要が減る分,バターなどを製造する工場の稼働率はピークを迎える。しかし,今年はコロナ禍により飲食店や学校給食の需要が激減したため,生乳の処理能力が追いつかず,約5000㌧が廃棄される可能性があるという。だが,この問題についてはネット上で,『国産バターの9割は北海道で製造。北海道の生乳は「ホクレン」がほぼ独占。生乳はバターにすると長期保存可能だが,ホクレンは生乳をバター用にすると利益が減るので増やさない。ホクレンは、生乳の価格を下げるより,捨てたほうが儲かるので,生乳価格も下げずに捨てる』とか,『1000㍉㍑だった牛乳パックがいつの間にか900㍉㍑に減っている。元に戻せば11㌫以上多く消費されるんじゃないの?増税のタイミングで値が上がり内容量も減らすけれど,余りそうになっても値下げせず内容量も戻さずに消費しろとだけ言われても都合が良すぎるのでは?』など厳しい意見も。

 しかし,コロナ禍が続く中,燃料や飼料が値上がりし,酪農経営は一段と厳しくなっているという。牛乳に限らず農作物はみな生きものなので,生産量を完全にコントロールできない。“食べ物を粗末にすれば目が潰れる”とはいえ,豊作貧乏になるよりは廃棄処分の道を選ばざるを得ない。辛いところだが,安売りすれば日本の酪農業は壊滅するというのであれば仕方がない。

 とにかく,品薄になったらメニューを調整してでも,余剰になったら廃棄してでも,「適正価格」を維持し,デフレから脱却しないと,ポスト・コロナを生き残れない。無論GS業界も。来年もどうぞよろしく…。

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