セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.919『何のためのセルフ?』

GS業界・セルフシステム

2022-10-17

 『スーパーマーケットが「セルフレジ」を悪用した万引き被害に頭を悩ませている。バーコードの読み取りや精算を客が自ら行うセルフレジは,人件費削減への期待などから普及が進むが,万引き犯に人の目の少なさにつけこまれた格好だ。故意の万引きと悪意のない精算ミスを見分けづらい難点もある。店側は,レジに客を撮影するカメラを取り付けるなど対策を急ぐ』─10月10日付「讀賣新聞」。

 大手スーパーでは,「イオン」が,まだ「ジャスコ」とよばれていた2003年からセルフレジの導入を進めてきた。決済方法は,顧客自らが商品のバーコードをレジの読み取り用画面にかざして,表示された金額を現金か電子マネーで精算するというもので,この方式は現在までほぼ変わっていない。最近では,中小のスーパーにもセルフレジコーナーが見られるようになり,相当普及が進んだかと思いきや,全国スーパーマーケット協会など3団体が公表している「2021年スーパーマーケット年次統計調査報告書」によると,全国278企業の中でセルフレジの設置率はまだ23.5㌫しかないそうだ。コロナ禍であれほど「非接触」が叫ばれた2020年ですら15.8㌫にとどまった。

 セルフレジの設置率を企業規模ごとに見てゆくと,51店舗以上を保有している大手では70㌫を超えているのに対し,26~50店舗の中規模では40㌫弱,4~10店舗という地域密着型になると13㌫ほどしかない。設備投資ができる大手のほうが設置率が高いのは当然だが,それ以上に普及の妨げになっているのは,本来の人手不足解消に繋がっていないばかりは,かえって現場の負担となってしまうようなのだ。例えば,東海地方のあるスーパーでセルフレジコーナーが閉鎖されてしまったことがあり,その理由はセルフレジ係が体調不良で休んでしまったからだという。

 つまり,セルフレジといっても完全無人というわけには行かず,機械の操作が分からない人をサポートしたり,読み取りや釣り銭のエラーがでたときに復旧させたり,スキャン後に返品するなどめんどくさいケースに対応したりと,常に数名のスタッフが張り付いていなければならない。そのマンパワーが,大手と中・小規模店とでは大きな開きがあるようだ。しかも,ここにきて冒頭の記事のように,万引き監視という新たな「仕事」も増えてゆくようなので,ますます人手がかかりそうな感じなのだ。

 確かに,様々な形状の商品に印字されているバーコードをすべて確実にスキャンさせるのって,案外難しい。特に高齢者の方には。スキャンしたつもりで袋に入れたところを,万引き犯に間違えられてしまうということだってあるだろう。その見極めをスタッフに任せるというのはちょっと酷な気がする。誤って“お声掛け”をした挙句,客を泥棒扱いしたと訴えられたんじゃたまったもんではない。訓練された専従スタッフを常駐できる大手はともかく,中小のスーパーは人手不足で通常のレジ係が兼務するケースが多く,セルフレジのせいで業務の負担が増すばかり…。これじゃあ何のためのセルフ化か分からなくなってしまうというわけだ。

 セルフ化においては先輩格のGS業界だが,1998年4月にセルフ給油が解禁されてからしばらくは,やはり“万引き問題”に悩まされた。当時のセルフシステムの多くは,給油終了後にレシートを持って精算所で支払うというスタイルだったので,給油後にそのまま逃げて行ってしまう悪質なドライバーへの対応に苦慮した。私は当初から「前払い方式」にしないと駄目だと訴えていたが─。

 初年度85か所から始まったセルフスタンドも,いまでは1万か所を超えるまで増えたが,それでも全GSの35㌫程度。しかも,その間 全国のGS数は半分近くまで減少したというのに,である。セルフ解禁後10年ぐらいで過半数はセルフになるだろうという私の予想は見事に外れたわけだが,裏を返せばまだまだGS業界のセルフ化は道半ばということ。これからセルフ化を検討される方には,くれぐれも「人手の掛からない」システムを導入なさいますように。

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