セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.952『2024年問題』

社会・国際

2023-06-05

 最近,ニュースで連日のように報じられている「2024年問題」。働き方改革関連法によって2024年4月1日以降,自動車運転業務の労働時間は休憩を入れて年3300時間まで,残業は年960時間までに限られることにより,日本の物流機能が大きく低下するとみられている。「野村総合研究所」の試算では,2030年に見込まれる荷物の量の35㌫が運べなくなるとのことだ。

 改正後でも,トラックドライバーは,仮に毎日働いたとすると,一日あたり9時間,残業2時間以上という計算なので,十分長いといえるが,荷物を運んだ距離などで収入が決まるドライバーも多く,労働時間が短縮されることで,収入が減ることが不安視されている。国交省の資料によると,トラックドライバーの年間所得は,全産業平均と比較して,大型で約1割,中小型で約2割低い。長時間労働をしないとまともな稼ぎが得られない劣悪な環境が常態化していたと言える。

 迫りくる“物流危機”への対処策はほぼ一択,すなわちドライバーの賃金を向上させること。そうすれば,低賃金・長時間ゆえに生じている人手不足もある程度解消され,「2024年問題」が深刻化するのを避けられるだろう。だが,それは運送コスト増を意味する。当然,タンクローリーの運賃アップ分が仕入れ価格に上乗せされることにもなる。だが,これは甘受せざるを得ない。コロナ禍に苦しんだ3年余のあいだ,私たちは“エッセンシャルワーカー”の存在の大きさを思い知らされたはず。誰かがモノを運んでくれなければ,私たちの暮らしは回ってゆかないのだ。荷物を受け取る側が,何でも“早く安く”届くという意識を改めない限り,この問題が解消されることはないだろう。

 とはいえ,来年4月からいきなり運賃がハネ上がるのも避けたいところ。そこで,こんな案も─。『2024年問題に対応するため,政府が2日にまとめた政策パッケージの中に,トラックの高速道路での最高速度を時速80㌔から引き上げることが盛り込まれた。ドライバーが加入する労働組合からは「安全に働けるようにするための施策であるはずなのに,本末転倒だ」と反対の声が出ている』(6月2日付「朝日新聞」) 仮に時速100㌔に緩和すれば,東京―大阪間は片道1時間半短縮できるというのだが,厚労省の公表データによると,全産業平均年齢に対して,大型は5.7歳,中小型でも3.0歳高く,年々高齢化が進んでいる。そんな状況で,最高速度を引き上げ,ドライバーにもっと早く運ばせようとするなんて,とてもまともな発想とは思えないのだが…。

 別の解決案は,外国人労働者で人手不足を補うというもの。この件について,全日本トラック協会の23年度版の事業計画書では,「一連のドライバー業務を外国人在留資格の「技能実習」に追加すること」を目指すとしている。この制度は農業や漁業,建設業や製造業など90を超える業種に導入されており,運送業もこれに加えてほしいというわけ。ところが,建前は開発途上国の出身者に技術を継承させることが目的とされているが,実際には「低賃金で外国人を雇用する手段」として悪用されていることが多いため,いまや制度廃止が検討されている。そんな制度にいまだこだわっているのは,“外国人ドライバーを雇えば人件費を抑えられる”という前近代的な考えがあるからなのか。

 そもそも技能実習生として迎える外国人で国際運転免許持ってるような人が日本にわざわざ稼ぎに来るのか。日本に来てから日本語の勉強や教習所通って大・中型免許を習得するには時間と費用がかかり過ぎるし,そこまで面倒みてくれる運送会社がどれだけあるのか。“外国人は日本で働きがっている”という考え自体,時代錯誤も甚だしい。アジア諸国が急速に経済力を持つなか,日本の労働市場にかつてのような魅力はない。むしろ,日本の若者たちが,賃金の高い東南アジア諸国に出稼ぎに行く時代なのだ。日本のトラックドライバーが,高給を求めて外国で働くことも珍しくなくなるかも。

 昨年6月,韓国では労働待遇改善を求めて6千人を超えるトラックドライバーがストを敢行した結果,1600億円相当の損失が出たという。日本でも,ネットショッピングの取扱高が年々増え続けているが,いい加減,「送料無料」や,「即日発想」や,「再配達」なんて過剰サービをやめないと,同様のことが起きるんじゃないかと心配だ。

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