セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.957『マイナカード』

社会・国際

2023-07-10

『マイナンバーカードの自主返納の枚数について,河野 デジタル相は7日,「数件から十数件になったという報道は承知しているが,全体の件数は全国的に把握していない。その程度の数だと思っている」と述べ,自主返納枚数はごく少数にとどまるとの見方を示した』─7月7日付「朝日新聞」。

 マイナンバーに別人の公金受取口座がひも付けされていたり,健康保険証と一体化したマイナ保険証に別人の情報が登録されていたりとトラブルが相次ぎ,利用者に不安が広がった結果,先月だけでも2万枚の自主返納があったそうだが,「その程度の数」だから,騒ぐ必要はないというのが政府の見解のようだ。

 まあ,新しいシステムへ移行する際にはトラブルは付きものであって,一時的な混乱は避けられない…と大様に見たいところだが,もし,マイナ保険証に別人情報が登録され誤って投薬されれば命にかかわるわけで,健康や生計にかかわるものが誤って扱われるとなると,やはり心配になってしまう。

 この際,一旦システムを停止すべきでは,との声も強まっているが,いまのところ政府はシステムの“総点検”をしたうえで,予定通り来年秋にはマイナ保険証に切り替えるとしている。なぜ普及を急ぐのか。やはり,コロナ禍で患者情報の共有がファクス頼みという状況に陥り,医療のデジタル化が後れていることがあからさまになったことが大きかったんじゃないかなと推察する。給付金の支給やワクチン接種状況の把握などで混乱をきたした苦い経験も背景にあるのだろう。

 だが,実はもっと恐ろしい企みがあるのでは,と心配する人たちもいる。すでに,昨年3月に運転免許証とマイナカードを一体化させる道路交通法改正案が,今年の3月には年金給付の受取口座も本人が拒否しなければマイナカードと自動的に紐づけられることが閣議決定されており,個人情報が次々に1枚のカードを通して紐付けされ,国家権力に一元管理されることに危惧の念を抱く人たちだ。

 例えば,国民の金融資産をすべて把握すれば,新たな負担を課すことで国家財政危機を軽減することができる。「預金額が1000万円超の世帯は,収入額にかかわらず,健康保険の負担率を5割に引き上げる」なんてことも可能になる。すでに「デジタル先進国」中国では,12億人以上が利用するスマホ決済のアリペイに集まるビッグデータが“活用”されており,買ったもの,食べたもの,視聴したものなど様々な履歴データによって「信用スコア」と呼ばれる,国民のランク付けが行われているとのこと。ロシアではいまや「デジタル赤紙」がスマホに送られてくる。そんなことを,日本政府がするはずないと断言できるか…というわけだ。

 まあ,いくら心配したところでどうしようもないことだし,お上のやることには基本的には従うしかないのだが,一方では,デジタル社会がバラ色の未来だと信じるほど単純でもない。デジタルという道具を使うのは人間であり,為政者はその道具を都合よく使うのが世の常だ。ちなみに,マイナカードの機能は「マイナポータル」というアプリをダウンロードしてスマホで使えるのだが,その利用規約にはこう明記されている。『デジタル庁は利用規約の変更が(中略)合理的であるときは,本利用規約を改正することができるものとします』『マイナポータルの利用にあたり,利用者本人または第三者が被った損害について,(中略)デジタル庁は責任を負わないものとします』─。

 ところで,総務省によると,マイナカードは7月2日時点で約9千7百万枚,人口の77㌫に達している。カードの普及に大きく貢献したのは,最大2万円分のマイナポイントだ。実は,このポイント,カードを返納しても返す必要がないため,ポイント取得後に即返納する人もいるんだとか。マイナカード普及のために,これまで2兆円超の予算をつぎ込んできたそうだが,このまま制度への不安が解消されず,返納が続くようなことになれば,ポイントをばらまいただけの事業ということになってしまうのでは。入会時に景品を配り,ガソリンが10円引きになる期間が過ぎたら,さっさと退会されてしまう元売系GSのクレジット会員みたいだな…。

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