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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.961『野球の日』

エンタメ・スポーツ

2023-08-07

 8月9日は「野球の日」。語呂合わせと,全国高校野球大会の期間中であることから,この日が制定されたそうだ。すでに国民的スポーツとして日本中に普及している野球,いまさら普及促進を図る必要もあるまいと思っていたが,野球人口は10年ほど前から減少傾向だという。日本高野連がまとめたデータによると,この9年間で公式野球部員は約4万2000人減った。加盟校数はピークだった2005年から435校も減少した。

 高校野球部員の減少は,学童野球の競技人口が減少しているから。慶應高校の前監督で,『エンジョイ・ベースボール』という著書もある上田 誠氏によると,日本の野球の底辺を支える学童野球は,いま危機的な状況にあるという。その理由として,学童野球を仕切る全日本軟式野球連盟のガバナンス不足を挙げている。

 ローカル大会の規制がないため1年間に200試合以上しているチームもあるほどの試合過多,そのために発生するスポーツ障害の増加(小学生でトミージョン手術をした子もいるそうだ),罵声や長時間練習など指導者の旧態依然とした指導,野球用具の高騰,勝利至上主義のため同じ選手ばかりが出場する,サッカーやバスケットなど他競技の上手な振興策に遠く及ばないなど問題山積で,連盟が危機感を持って指導者の育成や試合数・球数・練習時間などの制限,子どもに合ったルール改正などに早急に取り組むべきだと上田氏は訴えている。

 実際,小中学生の野球人口は2007年に約66万4千人だったのが,2020年には約41万人まで減ったそうだが,これは少子化の7~8倍のスピードだというから,かなり深刻だ。WBC優勝は,改めて野球の魅力を知らしめたが,栗山英樹監督は大会前に,「野球界の未来のために。次世代の発展のためにやっていきたい」と語っていたし,MVPとなった大谷翔平選手は「日本の子どもたちがかっこいいと思って,野球をやりたいと思ってくれるはず。それがうれしい」と語っていた。こうした発言の背景には,やはり日本野球への危機感があるに違いない。

 私は,日本の少年・学生野球の最大の問題は「昭和式軍隊野球」にあると思う。昭和,それも戦前・戦中の精神主義と同調圧力がいまだにまかり通っているのが,日本の野球,とりわけ高校野球だ。組織のために個性を滅却させる風土が,野球から“楽しさ”や“喜び”を奪い,現代の子どもたちの野球離れに拍車をかけているのではないか。とにかく,野球を愛する者にとって,野球が廃れてゆくことは悲しいことだ。プロ・アマが協力して改革に取り組んでもらいたい。

 ところで,プロ野球の歴史で8月9日といえば,いまから36年前のあの試合に尽きる。1987年,ナゴヤ球場での中日-巨人戦。中日の先発投手は高卒1年目の近藤真一。この日が一軍初登板。5回を終え,中日が6-0とリード。だが,この頃から球場は異様なムードが漂い始める。近藤のノーヒットピッチングが続いていたのだ。当時,私もラヂオを聴いていて“おいおいマジかよ…”と。結局,NPBの歴史上類例のない「初登板投手によるノーヒット・ノーラン」が達成された。その後,肩の故障などで6年間12勝で終わったが,近藤真一の名は「野球の日」と共に野球ファンに記憶されている。昨年から岐阜県の大学野球部監督として汗を流しているとのことだが,どんな指導者になるのだろう。

 野球エピソードをもうひとつ。一年生から4番打者に抜擢されたある高校球児は,先輩が後輩に威張り散らし,暴力を振るう体質に嫌気が差し,練習に行かず,映画館に入り浸る日々を送っていた。しかし,地方予選が近づいてくると決まって監督が「戻ってきてくれ」と頼みに来るため,結局彼は3年間に8回も入退部を繰り返した。その野球部員の名は落合博満。“オレ流”を貫き,三冠王に三度輝いたNPB最強のスラッガー。近藤が初登板したあの日も2ホーマーを放っている。

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