セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.963『ガソリン価格は風任せ?』

政治・経済

2023-08-21

『2023年4~6月期のGDP(国内総生産)速報値は,民間シンクタンクなどの事前予測(平均で年率換算3.0㌫)を上回る年率6.0㌫の高成長を達成した。外需がけん引し,年換算のGDPはコロナ禍前のピーク(19年7~9月期)を上回り過去最高を記録。だが,コロナ禍からのサービス消費回復があったにもかかわらず個人消費がマイナスに転落するなど,長引く物価高が影を落とし,力強さを欠く内需が浮き彫りとなった』─8月15日付「時事通信」。

 折しも,17日のニューヨーク市場で円相場が1㌦149円台をつけ,32年ぶりの円安水準を更新し,東南アジアにおいても円安基調となっている。先日も,テレビで三重県のミキモト真珠島で外国人観光客が真珠を爆買いしていったというニュースを見た。シンガポールから来たという女性客が,108万円のジュエリーを即決購入。「いま円安だから,ここで買ったほうがシンガポールで買うよりずっと安い」と笑顔で取材に答えていた。

 前回のコラムでも取り上げたように,8月からは最大のインバウンドである中国からの団体旅行が解禁されたので,第2四半期のGDP数値は,さらなる記録更新となるだろう…と思いきや,その中国の景気に暗雲が立ち込めている。17日,経営危機に陥っていた中国不動産開発大手,「恒大集団」が発表した22年12月期の連結決算によれば,負債総額は約2兆4300億元(約47兆円)に達し,債務超過に転落したとのこと。同社は,とりあえず米国の債権者からの訴訟リスクを回避するため,米国で破産申請をした。

 47兆円の債務超過って…中国のGDPの2㌫に当たるんだと。エグいな。恒大以外の大手デベロッパーの経営危機も相次いで表面化しており,今度こそ中国バブル崩壊かと不安が広がっている。不動産の叩き売りが始まり,担保価値が下がり,株価が下がるという,かつて日本が経験した道を辿るのか。いずれにせよ,観光産業のみならず,日本経済に少なからず影響が及ぶと見られている。

 一方,内需の柱である個人消費は3四半期ぶりにマイナスとなった。円安による旺盛な外需に頼っているあいだに,消費者の財布のひもを緩める施策を講じ,内需主導の成長軌道に乗せないと,中国が咳き込みだした途端,日本は肺炎になってしまうと,多くの識者が警鐘を鳴らしている。“言うは易し”で,簡単にできりゃ苦労はないが,とりあえず円安をなんとかせんといかんのじゃないか。だって,レギュラーガソリンの全国平均価格が180円越えてるんですよ!しかも,そのガソリンを売ってる我々は全然儲かってないんだから。(苦笑)

 世界はインフレ退治を目指す局面に入っているが,先月28日,植田総裁になってはじめて行われた日銀の金融政策決定会合では,いわゆる「異次元の金融緩和」を続けながらも,長期金利の誘導目標上限を0.5㌫から1㌫に引き上げるという,どちらに誘導したいのかよくわからない結果となった。おかげで,円安は依然収まらず,物価上昇に歯止めがかからない。

 事ガソリン価格に限って言えば,ガソリンへの補助金を撤廃してこのまま価格が上昇してしまうと,この先の物価をさらに0.3~0.5㌫ほど押し上げ,個人消費は0.2㌫押し下げられるとの試算も出ている。仮に,原油価格がWTIで85㌦/バレル程度まで上昇し,円安が150円まで進んだ場合,9月末のガソリン価格は212円程度にまで達するそうな。まさに「異次元の」ガソリン価格だ。

 ガソリン価格が上がるたびに決まって,「トリガー条項を発動せよ」,「二重課税をやめろ」という声がSNSで沸いてくるが,もういい加減あきらめたらよろしいのでは,と思う。財務省が税率を下げたり,まして撤廃するなんてことはほぼほぼない。ただし,2022年度の国の一般会計の税収は71兆1373億円で過去最高となったそうなので,補助金を延長することはあり得る。

 それもだめなら,あとは風向きが変わってくれるのを願うしかない。前述のとおり中国経済の悪化傾向が目立ってきており,これが今後原油価格を押し下げるかもしれない。また,世界経済の減速懸念が,リスク回避での円買い,円高へとつながる可能性もある。そうなれば,年末にかけて国内ガソリン価格が一転して低下するんじゃないか。でも,そうなった暁には肝心の売れ行きはガタ落ちしてるだろうけど…。

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