セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.964『副作用』

社会・国際

2023-08-28

『政府,与党がガソリン価格を抑えるための補助を9月から拡充する方針を固めたことが24日分かった。ガソリン価格が1リットル当たり180円を超え15年ぶりの高値で推移する中,9月末に期限を迎える補助金制度を少なくとも年末まで延長。財源には使い残した予算を充て,予備費の活用も視野に入れる』─8月24日付「産経新聞」。

 “やっぱりそうしましたか”という感じ。長引く物価高で国民がイライラしている中,マイナカードの失態が続くわ,自民党議員の汚職疑惑や物見遊山の研修やらが報じられるわで,岸田政権への支持率は,時事通信などによる世論調査で,「危険水域」とされる20㌫台まで落ち込んでいる。このままガソリン補助金を打ち切って200円台になれば,国民の不満はますます高まる。来月から引き下げ効果が出るよう,いま大急ぎで制度設計を行なっているとのことだ。

 相変わらず二重課税や暫定税率など,根本的な制度の見直しはやる気がないようだが,とにかく当面の価格上昇は抑えられる見通しだ。それにしても,前回も書いたことだが,「異次元の金融緩和」の副作用が,ここに来て一気に現れた感がある。インフレ退治が後手にまわれば,ズルズルと補助金をつぎ込む事になると警告する識者は少なくない。それによる副作用は財政のさらなる悪化であり,とどのつまりは増税だ。

 一方,原油価格の方はといえば,米利上げ長期化や中国の景気減速で燃料需要が打撃を受けるとの懸念が重しとなり,下落傾向にある。だが,産油国の減産が続いており,依然80㌦近い価格で推移している。減産は来年いっぱい続くそうだから,大幅な下落は期待できそうもない。3年前に,「マイナス取引」という“地獄の底”を体験した産油国は,もう気前よく原油の増販セールはしないだろう。コロナ禍による副作用が,中東原油に依存する日本を苦しめている。

 産油国が一向に増産に応じない理由はほかにもある。ウクライナ戦争以降,西欧諸国はロシア産原油を買えなくなり,これがゼロエミッションへの取り組みに一層拍車をかけた。今後原油消費量が漸減してゆくのであれば,何も量販する必要はない。結果的に産油国の地位はこれまでよりも高まり,最近では潤沢なオイルマネーでネイマールなどサッカーのスター選手を次々に獲得して,欧州のサッカーファンを嘆かせている。これもまた,脱炭素がもたらした副作用といえる。

 日本では先週大きな出来事があった。福島第一原発の処理水の海洋放出が始まったのだ。トリチウム以外の放射性物質を,安全基準を満たすまで浄化し,なおかつトリチウムも限界値以下にまで海水で薄めた水だそうで,「多核種除去設備」の頭文字を取って「ALPS」処理水というんだそうな。いくら安全基準を満たしているとはいえ,「アルプスの天然水」とは違って,「プランクトン⇒魚貝類⇒人間」へと害毒が及ぶのでは,と心配する人たちがいる。中国は日本の海産物の全面禁輸に踏み切ったが,政治的側面が強い。理由はともあれ,日本の漁業には大打撃。処理水のタンクがあふれそうになってからドタバタと─というのではなく,もっと前もって地元業者や近隣国に根回しできなかったものか。問題を先送りしてきた副作用は決して小さくない。

 副作用つながりで最後に大谷翔平について。今シーズンも,人間とは思えない活躍を見せていたが,やはり彼も人間だった。先月27日のデトロイトでのダブルヘッダーでは,第1試合で投手として1安打完封勝利,第2試合で指名打者として2ホーマーを放つという離れ業をやってのけたが,このあたりから腰の張りや腕の痺れなどが出始め,つい先日,右肘靭帯の損傷で今期は投手としてはもう出場しないことになった。とはいえ,昨年に続き2桁勝利をあげ,28日現在,三振奪取率はリーグ2位,被打率は同1位というすごい成績。しかも打者としては出場し続けるという。本塁打王は確実で,打点王も射程圏内。この先,彼が残りの試合をすべて休んでもMVPに選出されることは間違いない。願わくは,二刀流の副作用が軽微であってほしい。 大谷君,くれぐれも無理しないでね。

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