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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.973『なんば線シリーズ』

エンタメ・スポーツ

2023-10-30

 ニューヨークには二つのメジャー球団がある。一つはいわずと知れたヤンキース。メジャー屈指の人気球団で,WS(ワールドシリーズ)出場40回,優勝27回はいずれもメジャー最多だ。もう一つはメッツ。1962年の誕生初年度に40勝120敗という歴史的大敗で「お荷物球団」と呼ばれたが,着実に力をつけ1969年にはWS初制覇。アンチ・ヤンキースのニューヨーカーたちを狂喜させた。優勝パレードの日に天気予報が,「きょうのニューヨークは晴れ,ときどき紙吹雪が降るでしょう」と言ったのは語り草となっている。

 アメリカンリーグのヤンキースとナショナルリーグのメッツがWSで対戦したことが2000年に一度だけあった。結果は4勝1敗でヤンキースが優勝,3年連続WS制覇という偉業を成し遂げた。両チームのホーム球場が地下鉄で結ばれていることから,「サブウェイシリーズ」とよばれ,ニューヨークは大いに盛り上がった。そして,日本では今年,「なんば線シリーズ」が開催されることに。関西を本拠地とするチームどうしの日本シリーズは,1964年の阪神と南海が対戦して以来,実に59年ぶり。

 阪神タイガースはセ・リーグの関西代表チームとして君臨してきたが,パ・リーグは南海,阪急,近鉄の電鉄3社のチームがあり,60年代,70年代と,関西の球団が優勝争いを繰り広げていた。ところが,90年代にとてつもなく強いチームが表われる。西鉄ライオンズの流れを汲んだ東の電鉄会社のチーム,西武ライオンズだ。西武黄金時代の到来によって,関西のチームはすっかり影を潜め,関西経済の地盤沈下もあって1988年に南海がダイエー,阪急が現在のオリックスに売却され,近鉄も2004年にオリックスと合併して消滅した。

 一方のタイガース。60年代に巨人の9連覇を許し,70年代以降は半分以上がBクラス,そのうち最下位になること12回。優勝は今回も含めてわずか4回と,名門球団の看板が泣く状態が続いてきた。今回の優勝は,2005年以来18年ぶりのこと。その2005年は,阪神にとって優勝以上に大きな出来事が起きた年でもある。この年の9月頃,阪神電鉄の株価が急速に値上がりしていたが,当初経営陣はタイガースの優勝によるものと見て,何の対策も取らなかった。しかし,実は投資会社・村上ファンドによる買占めが進んでいて,同社は阪神グループの筆頭株主となる。“物言う株主”として村上ファンドは「タイガースの上場」を提案,物議を醸した。そして,この出来事が発端となって,翌年,阪神はライバル会社の阪急グループの傘下に入ることになったのである。つまり,今回の日本シリーズは,「阪急」タイガースと,オリックス「ブレーブス」という,いわば“異母兄弟”による対戦ともいえる。

 かつて阪急の本拠地 西宮球場と甲子園球場は直線距離で2.5㌔。70年代から80年代にかけて阪急は毎年優勝争いに絡んでいたのに対し,阪神は万年Bクラス。しかし,観客動員数ではいつも逆。阪急のみならず近鉄,南海も「阪神に一面を取られるな」を合言葉に対抗意識を燃やしたが,駅売りのスポーツ紙が一番よく売れるのは,きまって阪神の人気選手が活躍した翌朝の新聞で,人気薄のパ・リーグ球団の選手はずっと悲哀を味わってきた。今回,阪神はそうした在阪球団の積年の怨嗟とも相対することになる,と言ったら大袈裟か。

 在阪パ・リーグの歴史を改めて思い返すと,石油業界の変遷がダブるのは私だけか。かつて石油元売りも三菱,共同,大協,丸善,昭和など群雄割拠の様相だったが,いまや実質3社体制に。いまから30年前には日石とエッソが一緒になるなんて誰も想像していなかった。「阪神」と「デトロイト」がひとつの「タイガース」になったようなものだ。あるいはヤンキースとメッツが一緒になったような感じかも。それに伴い,GS業界から多くのプレイヤーが姿を消していった。さらに,前述のとおり阪神を脅かした村上ファンドは,いま業界3位のコスモ石油に再エネ事業の分離・上場を迫っている。これがさらなる業界再編の引き金となるのだろうか…。

 さて,30日現在,「なんば線シリーズ」は2試合を終えて1勝1敗。経済効果は全国で約1449億円との試算だが,そのうちの9割を関西圏が占めるとのこと。すごい盛り上がりだ。万博の方は全然盛り上がっていないようだが…。

 

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