セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.974『ライドシェア』

政治・経済

2023-11-06

 『運転手減少や訪日客急増で観光地や過疎地のタクシー不足が課題となる中,一般ドライバーが自家用車で乗客を有償で運ぶ「ライドシェア」解禁の是非を巡る議論が活発化してきた。全国ハイヤー・タクシー連合会(全タク連)によると,全国のタクシードライバーは8月末時点で約23万人。コロナ禍で離職が相次ぎ,2019年3月末から約2割減少している。一方,訪日客の回復で需要は増加。「タクシーがつかまらない」との声が各地に広がっている』─10月21日付「時事通信」。

 このあいだも,テレビで80代のドライバーの教育を命じられたタクシー会社の教官が,「とてもお客様の命を預けられないから,(雇うのを)やめたほうがいい」と会社に訴えるも,「とにかく人手不足だから,何とかドライバーに仕立ててくれ」と言われ,“責任が負えない”と,30年以上勤めた会社を辞めてしまったと報じていた。

 全タク連が20年9月に作成した「高齢者の活用に向けたガイドライン」によると,65歳以上のドライバーは約5万7千人おり,全体の約43㌫を占める。80歳以上のドライバーも480人いるとのこと。また,国土交通省は先月から,人口30万人以上の都市でのみ許可していた個人タクシーを地方都市にも広げるとともに,開業年齢の上限も65歳から75歳,過疎地等に限っては80歳未満まで引き上げることにした。

 80歳のタクシードライバーねぇ…タクシーなんて滅多に乗らないけど,たまたま乗ったら,ドライバーが後期高齢者だと,やはり不安かな。一方で免許返納を求めておきながら,タクシードライバーの年齢制限は引き上げるなんて,やはり矛盾していると感じるし,ドライバー不足の抜本的な解決とはならない。そんなわけで,米国や中国ですでに一般化しているライドシェアを導入しようということなんだろうが,全タク連は9 月に開いた事業者大会で「今後とも国民に対する安全・安心な輸送サービスを確保すべく,ライドシェア解禁を全力で阻止する」と決議した。

 ライドシェアでは,「普通免許」で運転が可能,運転技術の基準は特に設けられておらず,事故発生時は個人が対応する形となっている。そんな,いい加減な「運転者」と,タクシーの「運転手」を一緒くたにするなんてとんでもない,2種免許取得には費用も時間もかかるのに,だれでも人を運べるようにするなんて,タクシードライバーを愚弄している,ということなんだろう。

 思い起こせば,いまから25年前,日本でセルフ給油が解禁された時も,「素人が給油ノズルを握るなんて危険きわまりない」,「あんなものが日本の消費者に受け入れられるものか」と随分批判されたが,まったく杞憂に終わった。恐らく,ライドシェアもはじめはいろいろ問題が生じるかもしれないが,市民生活に定着するのに,それほど時間はかからないと思う。とりわけインバウンドからは積極的に支持されるだろう。

 そもそも,全タク連が反対する一番の理由は,安全性の担保などではないんじゃないか。海外のライドシェアでは,ドライバーが運賃を自由に設定することができるが,日本のタクシー会社では,運賃は許認可制度のもと運行をしている。海外と同様の運賃システムが導入されたら“価格破壊”が起き,タクシー会社の相当数が潰れるだろうと危惧されている。一方で, ライドシェアをするなら,業界の規制も撤廃すべきだとの主張もある。事業者には運転手の健康管理や指導監督をする運行管理者設置が義務付けられ,車検は1年ごとにあり整備費もかさむ。運賃も自由に決められない。これらの規制を緩和・撤廃するのが先,というわけだ。

 この点,GS業界はセルフ解禁と同時に新たな規制を掛けられたため,既存店が容易にセルフ化できない環境となっている。そのためいまだにセルフはGS総数の3割程度。今後,新たな競争相手となるES(充電スタンド)と伍してゆくためには,設備の簡易化や,監視業務の簡素化を求めてゆくべきなんだろうが,もうそんなことをする熱量もなく,すっかり諦めてしまった感がある。2021年度に開店したGSは92店舗。一方で539店が閉店した。2022年度はさらに加速し,76店舗の開店に対し,555店舗が消滅,閉店数が開店数の7倍以上という結果に。こうなったら,一刻も早くESと“相乗りライドシェア”するしかない?

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