セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.975『ネコババ ?』

GS業界・セルフシステム

2023-11-13

『ネコババ』─いやな言葉だ。「拾い物などをして,それを届けたり返したりしないで,自分のものとしてそ知らぬ顔をすること」(広辞苑)で,漢字で書くと「猫糞」。猫が糞をしたあと,足で砂をかけて隠す習性から生まれた比ゆ表現で,江戸時代にはすでに使われていたそうだ。

 GS業界はいまネコババの誹謗を受けているそうな。『政府によるガソリン価格の補助金を巡り,会計検査院が値下げ効果に疑問を呈した。補助金支給後に調査対象の給油所の7割で,卸価格との差が広がっていた。ガソリン価格は統制できず給油所の判断に委ねられており,実態が見えづらくなっている』(11月8日付「日本経済新聞」)。つまり,補助金で下がった仕入れ価格をそっくり売価に反映させず,一部をネコババしていると言うのだ。

 会計検査院の分析はこうだ。昨年1月に補助金事業が始まった直後から検査院が全国700カ所のGSを調査したところ,補助金が出る前と比べて,小売価格と卸売価格の差が1㍑あたり1.6円広がったという。つまり,GSが補助金を1.6円ネコババしてるんじゃないかと。前述の日経記事によると『実際に交付された補助金の額とガソリン販売数量から推計した抑制額でも約101億円の差が生じており,検査院は「小売価格の抑制に寄与しているのか不明」と結論づけた。これに対し全石連の森洋会長は「給油所が不当にもうけているといった指摘は事実に即しておらず,不本意だ」と反論』したとのこと。

 やれやれ…だから,補助金方式じゃなくて,トリガー条項の発動や,二重課税の是正という分かりやすい方法を取ればよかったんだ,という恨み節が聞こえてくる。例えば,ガソリン補助金からトリガーには含まれない灯油などの補助分を除いた減収予測額を今年9月時点で比較したところ,補助金は4.3兆円でガソリン価格を27.1円抑制したのに対し,トリガー減税なら2.8兆円でガソリン価格を25.1円下げれる。費用対効果から見れば,トリガー減税のほうが効果的だし,透明性があるからGS経営者がネコババの疑いをかけられることもないだろう。

 検査院は,毎週のガソリン価格のモニタリング調査に費やした約62億円の支出も無駄と指摘している。資源エネルギー庁は,民間会社に委託して全国2万カ所以上のスタンドに電話や現地視察などで価格調査を行っているが,もともとエネ庁は,以前から石油情報センターという財団法人を使って価格調査をしており,補助金の支給単価の決定にはこちらのデータが使われている。じゃあ,なぜ,わざわざ62億円も使って同じようなことをやっているのかとの問いにエネ庁は,「全数調査を実施することで価格抑制の実効性を確保し,実際に価格が抑制されてきた」と答えている。つまり,毎週,価格の聞き取り調査をすることで,全国のGSがネコババしないよう牽制してきたというのだが,実際には,ガソリンの価格は現金会員やカード会員,プリカやスマホなど,支払い方式に応じて,いくつもの価格ランクがあるため,電話調査では実売価格はつかめない。情報センターのデータも同様で,時々ニュースで公表される平均価格と実売価格とにはかなりの開きがある。

 この分野では,ほとんど予算をかけずに,きわめて正確なデータをリアルタイムで入手できる方法がある。ガソリン価格サイト「go.go.gs」を見てみたまえ! 全国の登録会員がフィードバックしている「現金」,「会員」それぞれの“本当の価格”がランキングされている。それによると11日現在,レギュラーガソリンの全国平均は169.4円で,24の都道府県が170円未満で販売している。我が愛知県は162.9円で3位,1位の和歌山県にいたっては158.7円で,補助金どころか消費税も還元する勢いだ。これで,なぜ“ネコババ”なんだ ?と言いたくなる。モニタリング方法に問題があるとしか思えない。

『猫の尻へ才槌』ということわざがある。「才槌」とは小さな木づちのことで,小さなことをするのに必要以上に大がかりな手段を使うことを指す。ガソリン価格対策にせよ,そのための調査にせよ,現行方式はまさにそんな感じ。ちなみに,猫のお尻,特に尻尾の付けねは神経が集まっている大事な部分で,痛めるとバランス感覚を失い,歩けなくなることさえあるので,絶対叩いたりしてはいけないそうだ。

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