セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.978『コンサルのおしごと』

政治・経済

2023-12-04

  『2023年1-10月の経営コンサルタント業の倒産は116件で,2022年同期 (78件)の約1.5倍に急増し,過去最多を更新した。このままのペースで推移すると,2009年の128件を抜いて,2023年は過去最多の記録を塗り替えそうだ』─11月28日付「東京商工リサーチ」。

  理由はコロナ禍によるとのこと。倒産件数の約9割が負債1億円未満の小規模事業者だったそうで,感染防止で対面のコンサルティングが難しくなる一方で,リモート対応に即座に切り替えられなかったり,顧客である中小・零細企業の多くがコンサルに経営指南を仰ぐより,国からの支援金などに頼るなどしたことから,本来なら“繁忙期”となるはずだったコロナ禍に業績不振に陥る,という皮肉な結果になってしまったというわけ。

  確かに,コロナ禍真っ只中のあの頃,多くの業種,とりわけサービス業はそれまで経験したことのない危機の中,悠長にコンサルに相談している時間もお金もなく,とにかく当座の資金繰りを何とかしなければならないという状況となった。コロナ禍は一応峠を越えたものの,コンサル業界はさらなる試練に直面している。AIの台頭だ。

  コンサルのおもな任務は,大量のデータから結論を導き出し,ベストプラクティスを顧客と共有して,新しいビジネスユニットを立ち上げ,それを成長させる戦略を提案することだ。これ,実はAIが得意とする分野のひとつなのだ。リサーチ,データ分析,レポート作成などは,人間よりもはるかに高速かつ効率よくできる。システムの能力が向上すれば,顧客の業務を観察して,アドバイスを提供するという仕事も,AIに取って代わられるかもしれない。コンサルタントという業種がなくなる日もそう遠くないだろう。

  ところで,AIといえば,先月17日,オープンAIのCEO サム・アルトマン氏が突如解任されたが,彼がマイクロソフトへ移籍すると報じられると,オープンAIの社員700人が行動を共にすると言い出し,結局5日後にアルトマン氏は元の鞘に戻ったというニュース。アルトマン氏は自社で開発しているAIの商業化をどんどん進め,会社の成長スピードを加速させることを良しとする急進派だったが,取締役会のメンバーには,これを危惧する人たちが少なからずおり,追放やむなしとなったという。それにしても,あまりに突然のことだったため,今回,AIシステムに,人類の脅威となるような“何か”が生じたのではないか,というウワサがネット上で飛び交っている。怖いね~。

  閑話休題。コロナ禍を機に,近頃のコンサル業は専ら政府や自治体の助成や補助金申請のサポートに力を注いでいる。昨年度は年間で約7千種類以上の補助金・助成金が発表されている。GS業界では,「SSの事業再構築・経営力強化事業」というのがある。経産省HPによると,『揮発油販売業者等が行う,カーボンニュートラル社会に向けたSSの事業再構築・経営力強化を図り,今後も残り続ける石油製品の需要に対して安定供給を確保するために必要な設備の導入等を行う事業に要する経費の一部を補助する事業』とのことで,これを活用して,多くのGSがPOSシステムや計量機,洗車機,ローリーなどの購入費の3分の2を補助金で賄った。

  今年度はすでに4回実施され,あと1回,12月から1月のあいだに公募が始まり,来年3月に締め切られると予想されている。そして,どうやら次の公募で,この補助金は打ち止めになる公算が高いとのこと。 コロナ禍の影響が落ち着いてきたため,今後は事業の継続性ではなく,成長性や収益性に力点を置いた支援制度へと見直しが図られると見られている。そうなると,GS業界は分が悪い。申請するとしても,充電スタンドに衣替えするとか,異業種へ転換するなど,本業をたたむ覚悟を持たねばなるまい。 ほかにもIT導入や人材育開発などの様々な支援制度があるようだが,申請手続きの煩雑な事といったら…。コロナ禍で日本の行政サービスのデジタル化がひどく遅れていることが問題となったが,“喉元過ぎれば”で,いまだ改善されていない。やはり,日本では“代書屋”としてのコンサル業はまだまだ必要なのかもしれない。

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