セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.981『愚行から学ぶ』

社会・国際

2023-12-25

 『ダイハツ工業が,1月も国内全拠点の生産停止を決めたことがわかった。一連の認証試験不正により,国内の完成車工場すべてが1カ月以上停止することになる。2月以降の生産を含め,現時点で生産再開のめどは立っていない』─12月22日「日刊自動車新聞」。

 滋賀県にあるテクニカルセンターで,前席の部品であるドアトリムに試験のときにだけ「切り込み」と呼ばれる不正な加工を行っていたとのこと。この加工によって側面衝突試験において安全性が高まり,試験を通過しやすくなるそうで,今年4月に内部通報で不正が発覚,2車種の出荷が停止された。その後,第三者委員会が調査した結果,新たに25項目,174の不正行為が見つかり,生産・開発中の全28車種で確認されたとしている。一番古いものは1989年。なんと34年前から続いてことになる。

 品質に厳しいとされる日本車だが,2016年に三菱自動車で燃費データ不正が発覚。それ以降,国内の乗用車メーカー8社のうち,トヨタ車などを除く6社で測定値を改ざんするなどの不正行為があった。トヨタ本体での不正は確認されていないものの,グループ企業では不正行為が相次いでおり,日野自動車では22年にトラックエンジンで,豊田自動織機でも今年3月にフォークリフト用エンジンで,いずれも排ガスデータの改ざん行為が判明している。そして,今回,完全子会社のダイハツでの不祥事。しかも,車体の安全性に直結する事案なだけに,ユーザーのあいだで不安が拡がっている。一部のパーツを交換するようなリコールで済む話ではない。

 それにしても,衝突試験で助手席の試験結果を運転席のデータとして書き込んだり,エアバッグを実際の衝突ではなくタイマーで意図的に作動させたりするなど,その手口は稚拙かつ悪質。我が家も,家内がダイハツ「トール」を基本構造として,トヨタへOEM供給された「タンク」(現・「ルーミー」)に乗っており,不正対象車種に含まれているそうなので,きわめて遺憾である。万が一の時,ちゃんとエアバッグが作動してくれますように…。

 おりしも,今年7月,鳥取市の高速道路上でデンソー製の燃料ポンプを搭載したホンダの軽乗用車がエンストを起こして停車後追突され,同乗者が死亡した事故が起き,デンソー・ホンダ両社は対応の不備を認めて,幹部が遺族に謝罪した。相次ぐ不祥事により,日本の自動車産業への信頼が揺らぎかねない事態となっている。

  第三者委員会の報告書によれば,『(試験に)絶対に合格しなければならない,不合格は許されない,という一発勝負の強烈なプレッシャーに晒されながら業務を行っていた』とあり,窮屈なスケジュールで開発日程の死守が求められていたとのこと。さらに,『自分や自工程さえよければよく,他人がどうあっても構わないという自己中心的な風潮が“社風”として深く根付いていた可能性がある』と指摘している。“最悪”と断ずるのはたやすいが,こういう傾向は多くの会社に見られるのではないか。これまでに起きた様々な事故や不正は,大抵,こういう企業風土が引き起こしてきたのではないか。

 社風を疑われても仕方のない話は石油元売にも。エネオスは2年連続で経営トップが辞任,しかもその理由が共に,酒席における「女性への不適切な行為」だったとのこと。個人のモラルの問題であり,エネオス製品には何の悪影響も及ぼさないが,国から補助金をもらっている立場で,トップが自分をコントロールできないほど酒を飲んでいるとは何事か,と批難されている。これでは,グループの4万4千人余りの従業員や,傘下の販売店に高い倫理観を求められるはずもない。そうこうしているうちに,取り返しのつかない事故が起こらないとも限らない。

 人間は弱いいきものだ。プレッシャーやストレスにさらされると“良心”という安全装置を自ら解除してしまい,不正を働いたり,乱交に興じたり,そういう行為を見過ごしたりしてしまう。決して他人事ではない。「他山の岩,もって玉を攻むべし」という中国のことわざがある。他の山の粗悪な石は,それ自体は飾ることはできないが,自分の玉を磨くのに使えるという意味。きっと来年も,腹立たしいニュースがたくさん報じられるだろうが,この格言を肝に銘じてゆきたい。

※ 次回は1月8日に掲載します。

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