セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.982『炎2024』

社会・国際

2024-01-08

 2024年元日,私は「セルフスタンド日進東」で店番をしていた。4時10分,タブレット端末などから一斉に緊急地震警報がけたたましく鳴り出した。そういう時は,丈夫なテーブルや机の下に身をかくし,頭を保護するのが常識とされているが,防災・危機管理アドバイザーの山村武彦氏は,「どんな状況であっても“机の下に身を隠す”のが正しいと決めつけるのはかえって危険。古い建物だと倒壊する可能性があるし,倒壊しなくても天井が落下したり,ドアが変形して閉じ込められたりした場合に,万一火災やガス漏れが発生した場合,身動きが取れず逃げられなくなる恐れがあります」と指摘している。

 ─で,私はというと,とりあえず監視室から飛び出したのだが,その数秒後に揺れが来た。キャノピーが落ちてこないことを祈りながら,数十秒ゆらゆらと横揺れを体感しているうちに“あの時”の感覚がよみがえった。2011年3月の東日本大震災,こんな感じだったなぁ,こりゃまた遠い所で相当大きなエネルギーが爆発したに違いない─。

 その後の惨状はご承知のとおり。能登半島を震源とする巨大地震で,石川県は壊滅的な被害を受け,7日14時現在,死者128人,安否不明者195人,倒壊した家屋は一千戸を優に越えていると見らる。ライフラインは寸断され,道路・鉄道はズタズタ,救援物資の運搬もままならない。当社も,3日の朝,ボランティア組織からガソリンと灯油の提供を打診され応諾したのだが,結局,時期尚早とのことで見送られた。今後,新たな機会があれば可能な限り協力したい。

 地震,津波と来れば「原発」。石川県には休止中の北陸電力志賀原発があったが,軽微な損傷はあったものの放射能漏れなどの事故はなかったとのことで,地元民はひとまず安どしている。「3.11」以降,定期検査入りし,現在まで休止中の志賀原発。2016年には原子力規制委員会から,原子炉建屋の真下に活断層があるかもと指摘され,再稼働は事実上不可能とされたていたが,昨年この判断が覆り,再稼働の準備を始めた矢先の大震災。やはり断層はあったと“証明”されたわけで,もし稼働中だったら,人為的ミスを誘発したかもしれず,油漏れ程度で済んだかどうか…。

 人為的ミスと言えば,翌2日に起きた羽田空港での旅客機と海保機の衝突事故。事故に至った詳しいメカニズムは今後明らかになってくるだろうが,どうやら,海保機が管制官の指示を誤解して滑走路に進入し,管制官もそれを示すモニターを見落としたため,衝突を防げなかったらしい。海保機の乗員6名のうち5名は死亡。能登半島へ救援物資を運ぶ任務を遂行中だったそうで,一刻も早く被災地に物資を届けたいという逸る気持ちが事故を引き起こしたとすれば,ある意味痛ましい“二次災害”といえるかもしれない。

 それにしても,火だるまになった日航旅客機から,乗客乗員379人全員が脱出できたことは“奇跡”といえるだろう。航空業界,とりわけ日航OBの方々は,「日頃の訓練の賜物」と胸を張るが,その後の報道を見ていると,衝突時の衝撃が比較的小さかったこと,機体が新しいモデルで機内に延焼しにくい素材が使われていたこと,乗客が総じてCAの指示に従順で,身ひとつで避難誘導に応じたことなどの“幸運”が重なったことは間違いない。いずれにせよ“自分ファースト”が当たり前の当世において,よくぞこの偉業を成し遂げたものだ。乗員のみならず,乗客全員がヒーローだと思う。

 3日には北九州市の「鳥町食堂街」で火災が発生,約42時間に渡って燃え続け約2900㍍ 35店舗が消失した。およそ400㍍南に位置する旦過市場一帯ではおととし,2度も大火事が起きていたのに,食道街の組合長によると,コロナ禍で集まることができず,防火訓練を実施していなかったという。羽田の事故と比べるのは無理があるかもしれないが,やはり,日頃の訓練の大切さを思い知らされる。死者がひとりも出なかったことは不幸中の幸いだが,新年早々生活の基盤の一切を失ってしまった店主たちの不安と落胆は察するに余りある。元日から3日続けて日本で生じた災厄。消費マインドの萎縮は避けられないだろう。日本だけでなく世界の至る所が紅蓮の炎に包まれている。「あけまして…」なんて呑気な挨拶をしている場合ではない。

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