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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.987『たかがスポーツ』

エンタメ・スポーツ

2024-02-12

 『アルゼンチン代表FW リオネル・メッシが4日の香港での親善試合に脚の不調を理由に欠場したにもかかわらず,7日に東京でヴィッセル神戸戦に出場したことに香港政府が強く反発した。香港での試合のチケットは最高4880香港㌦(約9万3000円)。欠場を巡り購入したファンらが返金を求め,政府も不快感を示すなど騒動となった』─2月9日付「日刊スポーツ」。

 メッシだって人間なわけで,コンディションの良し悪しは当然あろう。大枚叩いてチケットを買った香港のファンには気の毒だけど,仕方ないんじゃないかな~と思っていたが,事はそれほど単純なことではないらしい。東京での試合では,メッシは後半15分から出場し,「短くない時間激しい運動をした。香港市民は疑問を抱いており,説明してほしい」(香港文化体育観光局)と批難の声が拡がっているのだ。

 中国国営グローバルタイムズは「メッシと所属チームのインテル・マイアミの釈明は説得力がなく,その背後にある本当の理由について多くの推測が提起されている」と論評。その一つは,「彼らの行動に政治的な意図がある」というもので,香港がこの試合を通じて経済的復興を図ろうとしたことに対して,欠場によって反意を示したのではないかというものだ。仮に,メッシが香港では出場し,東京では欠場したら,日本のメディアはどんな反応をしただろうか。

 いずれにせよ,いまやスポーツとナショナリズムは切っても切れない関係にあるのは間違いない。とりわけ,FIFAワールドカップのような大会では,洋の東西を問わずどの国でも熱狂の嵐が起こる。日本でも例外ではなかったし,野球のWBC優勝は,いまも多くの日本人を誇らしい気分に浸らせている。そんなわけで,歴史においてスポーツはしばしば国威発揚に大きな力を発揮したし,為政者たちもそれを積極的に利用してきた。元スポーツ選手で政治家に転身した人も,世界中にたくさんいる。

 そんなわけだから,メッシのような“超”の付くスーパースターの一挙手一投足は,それが故意かどうかにかかわりなく,時の政治体制に影響を及ぼすのだろう。メッシに侮辱された“仕返し”のつもりなのか,中国・杭州市のスポーツ局は,3月に同地で予定されていた国際親善試合アルゼンチン対ナイジェリア戦を中止すると発表した。“たかがスポーツ”“たかがサッカー”という鷹揚な見方はできないようで,この事件による余波はまだしばらく続きそうだ。

 一方,韓国ではドジャースとパドレスとのMLB開幕戦が3月20・21日にソウルで開催されることになり,すでにチケットは完売,大変な盛り上がりだとか。もし,大谷翔平がコンディション不良で欠場したらどうなっちゃうんだろう。もちろん多くのファンはがっかりするだろうが“馬鹿にされた”“軽んじられた”などと憤慨するのはおかしなことだ。大谷がいなくても,目の前でM・ベッツやF・フリーマン,M・マチャドやF・タティスJr.といったキラ星のような一流プレーヤーを生で観られのがどれほど素晴らしい体験か,野球ファンなら分かるはずだ。

 スーパースターを巡る話題をもうひとつ。7日から10日まで,東京ドームでコンサートを開催した「世界の歌姫」テイラー・スウィフト。のべ22万人の観客を熱狂させたとのことだが,世界が注視しているのはそのコンサートのあとのこと。米西海岸時間11日(日本時間10日)にラスベガスで開催されるスーパーボウルに“テイテイ”(スウィフトの愛称)が出席できるかどうか─。

 テイテイが恋人であるカンザスシティ・チーフスのT・ケイシーに声援を届けられるかというのは表向きの関心で,彼女が全米最大のスポーツイベントで,バイデン支持を高らかに宣言するのではと全米が固唾を呑んで見守っているのだという。テイテイの影響力を警戒するトランプ支持者は,そもそもこのロマンスは民主党が仕組んだ“偽装カップル”だなどと陰謀論を主張しており,今年のスーパーボウルは異様な雰囲気の中で開催されることになった。この記事がリリースされたころには決着しているだろう…。

 いまの世でスポーツやエンタメが政治と距離を置くのは不可能に近い。だが,ひとたび試合が始まったら国や人種やイデオロギーなんか捨てて,選手も観客も大いに楽しんでほしいものだ。たかがスポーツなんだから。

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