セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.988『尋ね人』

社会・国際

2024-02-19

 先週,セルフスタンド日進東に警察官が訪ねてきて,近所に住んでいるお年寄りが,前日に散歩に出かけたまま行方不明になっているのだが,見かけなかったかと質された。給油客ならともかく,店の前を通り過ぎる人まで覚えているはずもない。だが,翌日の朝,今度はご家族の方がやってきて,沿道のコンビニで見かけたという情報もあり,スタンドの前を通っている可能性があるため,家を出た時間からの映像を確認してもらえないかとの事だった。そこで,当該時間帯の録画映像をチェックしてみたが,それらしき人物(白髪の女性で犬を連れている)を探してみたが,残念ながら見つからなかった。カメラに映らない反対側を歩いて行ったかもしれない。ご家族の話では,「若干,認知を患っていた」とのことで,帰り道が分からなくなってしまった可能性がある。家を出てからすでに48時間以上が経過しており,発見・保護が急がれる。

 いまから138年前の2月22日に,現存する世界最古の日刊新聞「ロンドン・タイムズ」(1785年創刊)に,初めて「尋ね人」コーナーが登場した。最初に掲載されたのはどんな内容だったのだろう。その後,日本の新聞にも『よしおへ 皆が心配している すぐ連絡寄こせ 母』みたいな三行広告が掲載されるようになった。犯罪ドラマなどで,警察が犯人と連絡を取るのに,三行広告を利用するという場面がしばしば登場したのを思い出す。SNSの発達と共に,三行広告は新聞紙面から姿を消した。一方昨今では,ネット上で人探しを装って詐欺や痴情を働く犯罪が急増しており,それがために新たな失踪者を生み出すという痛ましい状況となっている。

 警察庁によれば,2022年に届け出があった「行方不明者」は8万4910人にのぼった。原因・動機で一番多いのが「疾病関係」,つまり認知症などにまつわるもので,全体の3割を占めるという。認知症で行方不明になった人は,2022年には全国でのべ1万8,709人。統計をとりはじめた2012年から,10年でほぼ2倍に増えている。この数は,警察に行方不明者届が出された人に限られたものなので,実際はもっと多くの人が行方不明になっているとみられる。

 GSに来店する人は,基本的に自動車を運転しているのだが,年々高齢化が進んでいる。認知症っぽい(?)方の応対をする機会も増えてきている。ただ,「国立長寿医療研究センター」によると,単に高齢というのみで運転を中止すると,生活の自立を阻害したり,うつなどの疾病発症のリスクを高め,寿命の短縮にもつながることが多くの研究で確認されているとのこと。さらに,認知症発症との関連性では,運転をしていた高齢者は運転をしていなかった高齢者に対して,認知症のリスクが約4割減少することが分かっており,運転のような高度な認知機能を必要とする行動の保持が,将来の認知症の抑制に対して影響を及ぼすかもしれないとしている。一方,高齢ドライバーによる交通事故が増加しているのも事実で,許容範囲の線引きは非常に難しい。

 行方不明者を発見した人の半数は,探していた人ではなく偶然みつけた人だという。もし様子がおかしい高齢者をみつけたら,勇気を出して声をかけてみること。その場合は,なるべく優しい口調で,敬意をこめて話しかけることが大切だという。「認知症徘徊センター」によると,そもそも認知症による徘徊は突発的には起こらず,ほとんどの方が目的を持って徘徊しているという。例えば「仕事に行く時間」や「畑を見に行く」「散歩をする」などといった生活の習慣から徘徊につながるケースが多いという。徘徊の先には“本人なりの目的”を持っているため,それらしき人に出会ったら,まず話を聞いてあげることで相手を安心させることができるのだという。

 ところで,行方不明者約8万件のうち,約6万件は,届け出から1週間以内に所在が確認されているという。とはいえ,当事者にしてみれば最悪の事態を考えてしまったりもするわけで,気休めとはなるまい。私たちには「行方不明者」だが,家族にとっては,大切な親であり,配偶者であり,子どもなのだから。家族を探す人たちの胸中は察するに余りある。先ほどのおばあさん,無事であってほしい…。

コラム一覧へ戻る

ページトップへ