和田 信治
GS業界・セルフシステム
2006-03-06
久々に『セルフスタンド日進東劇場』、行ってみよ~。今回は、“オヤジ、領収証を欲しがる”の巻─。
私の店の販売室には2台のプリカ販売機が置いてある。1台は領収証(レシート)発行機能が付いており(以下1号機と呼ぶ)、もう1台は付いていない(同2号機)。1号機は、プリカを購入したあと、「ありがとうございました。領収証が必要な方は領収証発行ボタンを押してください」と音声案内をするスグレモノである。それでもうっかりボタンを押し忘れてしまい、あとから「すみませ~ん、領収書を…」と言ってくる客には、「次回からは…」と念押しして、コクヨの領収証で対応しているのだが、中には“常連客”がいて、毎回、わざとボタンを押さず、給油し終わってから領収証を請求してくるのだ。
この手合いの客は決まってオヤジである。オヤジの中には、レシートでは納得できない性格の種族がいて、とにかく手書きの領収証をもらわないと気が済まないらしい。もしかすると、いちいち店員に領収証を書かせる事で、客としての優越感に浸っているのかもしれない。
一方、2号機の方は、格安で購入した中古券売機で、補助的な役割のため販売室の奥に設置してあるのだが、わざわざ好んで2号機でプリカを買う客も結構いる。理由は、尋ねた事がないので不明だ。この2号機の前面パネルには、「この券売機は領収証が出ません」と太く大きな文字で書かれた案内板が貼ってあるのだが、時々、「すみませ~ん、領収証を…」と言ってくる客がいる。申し訳なさそうに言ってくるのならまだしも、名古屋弁で「おいコラ、領収証が出てこんがや!」と怒鳴られた日には、こっちもアタマに来る。もちろん、これもまたオヤジ族である。
「お客さん、ここに“領収証が出ません”と書いたるでしょー」(名古屋弁、以下同じ)
「そんなもん、見えんかった!」
「これ見て、これ!こんなにでっかく書いたるがね!」
「いや、見えんかった!」
“お前、もしかして字が読めんのか?”と思いつつも、押し問答していても仕方がないので、手書きの領収証を渡してやると、このオヤジ、「…これだけか?」とぬかすではないか。自分の過ちを頑として認めないばかりか、暗に粗品を要求するとは、一体どういう倫理感なのだろうか?転んでもタダで起きないというか、わざと転ぶというか、まったく呆れてしまう。
よそのセルフスタンドではどうなのか知らないが、我がセルフスタンド日進東においては、こうしたオヤジ族に、ほとほと手を焼いている。プリカを買い、レシートを受け取る─一見、何の問題もない単純な行為も、一部のオヤジたちにとっては、沽券に関わる忌々しい事のようである。「すみません」とか「お願いします」といった言葉は、彼らのボキャブラリーにはない。少なくとも、ガソリンスタンドでは、口が裂けてもそのようなことは言いたくないのだろう。
マイカーを運転し、ガソリンスタンドの店員にかしずいてもらう事が一家の主あるじのステイタスであった人々にとって、セルフスタンドの普及は、そうしたささやかなプライドさえ奪うものとなりつつある─とは少々大袈裟だろうか。領収証への執拗なまでのこだわりに、社会の変化に戸惑い、苛立つオヤジ族のストレスを垣間見た気がする。
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