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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.991『見上げてごらん夜の星を』

社会・国際

2024-03-11

 いまから243年前の3月13日,英国の天文学者 ウィリアム・ハーシェルは,おうし座の観測中に,輪郭のはっきりした斑点のような星を見つけたのだが,それは当時の星表にはない星だった。ハーシェルは当初「彗星を発見した」と報告したが,その後の観測でこの星は,土星よりもはるかに遠方にある巨大な惑星と分かった。今日,地球の約4倍の大きさで,29億㌔の彼方にあって約84年かけて太陽を一周する,太陽系第7惑星「ウラノス」(天王星)として知られている。

 ハーシェルの発見は,西洋の天文学界を驚かせたが,それ以上に衝撃を受けたのが占星術界だった。それまでは,人類は太古の時代から,恒星間を動く特別な星は七つ(太陽,月,水星,金星,火星,木星,土星)のみと信じられていた。これらの7星は神と同一視されて,西洋では7という数字は神聖なもの,幸運の数字(ラッキーナンバー)とされていたのだが,新たな惑星の存在が明らかになってしまい,“ラッキーセブン”に根ざして構築されていた西洋の文化や宗教や慣行が大きく揺さぶられることになったのである。もっとも,占星術者たちは,その後も次々に発見される星々に都合よく意味を付して現在まで商売を続けているが…。

 古代より,人類は夜空を見上げ,その星の数を数えたり,天体が移動する様を観測してきた。紀元前4世紀のギリシャの哲学者であり科学者でもあったアリストテレスは,地球が空間に掛かることなど決してあり得ないと教え,天体がそれぞれ透明で頑丈な球体の表面に固定されていると教えた。この教えは,教会のお墨付きをもらい,長らく宗教教義とされていたが,16世紀,イタリヤの哲学者ジョルダノ・ブルーノが,「星が天の表面に良質ののりで付けられていなかったり,丈夫なくぎで打ちつけられていなかったりすると頭上に落ちる可能性もあることを考えると,子供が考えるようなばかげた概念だ」とアリストテレスの説に異を唱えた。ところが,教会はブルーノを宇宙に関して異端的な意見を広めたという理由で火あぶりの刑に処した。

 しかし,天体望遠鏡の発明を契機に,アリストテレスの説の信ぴょう性に疑問を抱く科学者たちが急増してゆく。そして,遂に1687年にアイザック・ニュートンが,惑星を持ち上げるために機械的な有形の物体や物質は必要なく,惑星の動きを支配し,それらを軌道に固定させているのは重力という力だということを発見する。惑星は,何もない空間に浮かび,運動しているというこの説は,すべての学識者によって否定され,嘲笑されたが,やがて彼らの方が恥じ入ることになったというわけ。

 天王星を発見したハーシェルは,その後も天体望遠鏡の開発に注力し,天文学の発展に大いに貢献した。400年以上前にガリレオ・ガリレイが発明して以来,宇宙の謎を解くべく天体望遠鏡は進化してきた。世界最大のものはハワイにある「すばる望遠鏡」で,130億光年のかなたまで観測できるとのこと。ところが,21世紀の天文学者はガリレオと同じ問題に直面している。つまり,ガリレオが針で刺した穴のようにしか見えなかった恒星を,最新の望遠鏡で見ても,やはり同じようにしか見えないということだ。観測できる星の数こそ増えたものの,その大きさまでは測れない。確かなことは宇宙はとてつもなく広大だということだけだ。

 例えば,太陽系が所属する天の川銀河には,恒星だけでも1000個以上あると言われているが,それよりもっと多いという人もいる。人間は自分が住んでいる“町”の広ささえいまだ正確につかんでいない。しかも,天の川銀河は数多い銀河の1つに過ぎず,宇宙には数千億の銀河があるそうだが,数兆と言う学者もいる。これもあくまで推測で,実際にはもっともっと多いのかも。しかも,宇宙はいまも膨張を続けているというのだから,もう人間の理解を超えている。しかし,宇宙の広大さを前に,自分の存在の小ささを感じる体験は,脳科学ではAwe(オウ)体験といって,自我を少なくし,謙虚な気持ちを起こさせ,同時に前向きにもなり,「世の中のため,だれかのために役立ちたい」という思いを強くさせるのだそうだ。このとき,脳は通常の何十倍,ときには何百倍も活性化し,寿命を延ばす効果もあるらしい。早速,今晩あたり夜空を見上げてみるとしますか。

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