セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.992『脆弱性』

政治・経済

2024-03-18

 『米マクドナルドは15日,日本などで起きたシステム障害は,システムの設定変更が原因だったと発表した。サイバー攻撃が原因ではないとした上で,「ご不便をおかけしたことを心からおわびする」との声明を出した。システム障害は日本時間15日に発生し,店舗でのキャッシュレス注文や,スマートフォンからのモバイルオーダーができなくなった。ロイター通信によると,英国やオーストラリアなどでも障害が発生した』─3月16日付「毎日新聞」。

 なんか,大変だったみたいだな…。店頭で注文を手書きのメモで書き取り,電卓で計算して現金でお釣りを払っていた店もあれば,さっさと「本日休業」の張り紙を出した店もあったようだ。“すわ,サイバーテロ?!”とネット上で不安が拡がったが,外部のプロバイダーによるヒューマンエラーだったようだ。本当なら,やらかしちゃった人たちのメンタル大変だろうな,と余計な心配をしたりする。何せ,世界規模でのシステムトラブル。遺失した売上とか,無駄になった食材とか,復旧までにかかった人件費とか,わずか1日とはいえ膨大な損失が発生したことは想像に難くない。

 マクドナルドは,世界100以上の国と地域で約4万店舗を抱えている。それらがすべて一つのサーバーで繋がっているとしたら,あまりにもリスキーじゃないだろうか。“親ガメこけたら皆コケた”である。リスクは分散させるのが常道だし,トラブルが発生した場合に備えて,オフライン決済の仕組みやアナログ対応のマニュアルを備えておくことが必要じゃないかと思うのだが,コスト削減が最優先のグローバル企業,こういうトラブルはマック本部では大方織り込み済みなのかもしれない。大変だったのは,大混乱の中,お客と対峙したスタッフのみなさんだろう。ご苦労さまでした。

 マックのモバイルオーダーはとても便利で,私も利用させてもらっている。あらかじめ,スマホかタブレットで注文しておけば,あとは配布された番号を店頭で告げるだけ。ドライブスルーでは本当に速い。これをGSでも活用しようと,モバイルツールであらかじめ油種や数量・金額を注文して,GSではQRコードをかざすだけで,給油と決済ができるという仕組みを,「プットメニュー」という会社が開発,伊藤忠エネクスの店舗などに導入しているが,まだ全国で百数十店舗にとどまっている。

 思うにGSの場合は,商品がガソリンか軽油のどちらかだし,あらかじめ数量が決まっていないことも多い。また,商品を「受け取る」のではなく,結局その場でお客自身が給油しなくちゃいけないわけで,通常の給油・決済と比べて格段便利という実感が沸かないのかもしれない。これまでも書いてきたことだが,GSにおけるモバイルオーダーは,「給油の自動化」と組み合わせてはじめて,利便性を発揮できるのではないだろうか。

 それにしても,今回のマックのトラブルに限らず,システムトラブルによって店舗でのスマホ決済ができないという事象はちょくちょく発生している。10日には「ローソン」の全国1千4千店舗で一部の電子マネー決済がしづらくなった。昨年11月には,JR東日本の電子決済システムが通信障害のため半日使えなくなり混乱をきたしたことも。今後も,こういう事はある日突然起こるだろう。財布を持たず,スマホだけ持って出かけるなんて“大胆な”ことは,私にはとてもできない。

 そうでなくても,有数の「地震大国」で暮らしているのだから,発生直後は停電などで電子マネーもATMも使えなくなると思っておいた方がいい。やはり,モノを言うのは手持ちの現金だ。専門家によると,お釣りの受け取れないことも案じて,金額の大きい紙幣は避け,1000円札と100円玉,10円玉で2~3万円ほどを,防水性のある「ジップロック」などに入れて用意しておくようのが必然とのこと。また,災害時の混乱の中で紛失することも考えられるので,印鑑と,預金通帳,マイナカード,身分証,お薬手帳なども,すぐに持ち出せるように…。

 マックのトラブルから話がだいぶ脱線してしまったが,やっぱり現金の使い勝手のよさは捨て難いということ。とりわけ,有事の際には命綱と言える。思うに,キャッシュレスとEVは,その脆弱性においてよく似ている。どちらも便利で,将来性豊かだが,こんなご時世だ。あまり突き進みすぎると,ひとたび戦争や災害に見舞われた時,我々の暮らしは「石器時代」に逆戻りしてしまう。

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