セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.994『失われた信用』

社会・国際

2024-04-01

『小林製薬は29日,紅麹を配合したサプリメントによる健康被害で,新たに1人の死亡報告を遺族から受けたと発表した。サプリ摂取との関連が疑われる死亡者は5人目。同社によると,紅麹サプリ摂取後の入院者は延べ114人,通院者と通院希望者は計約680人に上り,健康被害の相談は累計で約1万5000件寄せられている。紅麹の原料供給先は52社で,商社などを通じた最終販売先は170社を超える。小林製薬は自主回収費用などを補償する方針で,自社分と合わせた費用は公表していた18億を上回る見通しだ』─3月29日付 「時事通信」。

 いやはや,大変なことになったものだ。『あったらいいなをカタチにする』が小林製薬のキャッチフレーズだが,人の健康に直結する製薬・食品メーカーとして絶対に“あってはいけない”事態を引き起こしてしまった。小林製薬といえば,「ブルーレット」,「アイボン」,「糸ようじ」,「あせワキパット」,「熱さまシート」など数々のヒット商品を開発してきた,私たちの生活になじみのある会社だ。そういう会社が発売していたサプリメントだから,服用した人たちは,腎疾患を引き起こす毒が入っているなどとは夢にも思わなかっただろう。

 私はサプリメントの類は一切摂取しないのだが,サプリの市場規模は,パンデミックで体調管理ニーズが高まったこともあって1兆円を超えるまでに成長,今後も伸び続けると見られていたが,今回の事件でブレーキがかかるのは必至と思われる。問題の「紅麹コレストヘルプ」は,悪玉コレステロールを下げる機能を持つ米紅麹ポリエチドという成分が含まれており,一日3錠服用するようすすめられていた。2021年から約100万個が販売されているが,現時点での回収率は0.4㌫にとどまっているという。テレビ報道では,服用してわずか2週間ほどでオシッコが出にくくなり,痛みが出始めた人もいたというから,結構毒性が強いようだ。

 現時点では,プベルル酸とかいう青カビ由来の天然化合物が検出されており,これが原因ではと報じられているが,余談は禁物。今後も,フェイクを含めあらゆるニュースが飛び交うであろうから,冷静に状況の推移を見きわめる必要がある。何せ件の紅麹を使用した食品があまりにたくさんあるため,風評被害を被る会社も相当出てくると思われる。専門家は「紅麹そのものは長年食べられてきたものなので,紅麹を使った食品すべてを怖がる必要はない」と説明しているが・・・。

 信用・信頼を得るまでには長い歳月がかかるが,それを失うのは一瞬だ。これはどんな商売にも言えること。当店も灯油シーズンが終ろうとしているが,今年も荷降ろし時の混タミ事故を起こさずに済んだ。できて当たり前のことだが,ひとたびミスをすれば店の信用はガタ落ちとなる。小さな企業は即倒産に追い込まれる。毎日,平穏無事に営業を続けるためには,凡事徹底あるのみだ。

 小林製薬が,医師から健康被害が疑われる症例の報告を受けたのは1月15日で,回収と使用中止の発表に2ヶ月以上かかったことから,同社の対応の遅れに批判が集まっている。製品の不良において対応が後手に回って被害を拡大させた事例は枚挙にいとまがない。今回も,同じ轍を踏んでしまったようだ。

 一方,事象は全く異なるものの,信用を裏切ってしまったという点で共通しているのが,大谷翔平の通訳兼世話役だった水原一平氏の違法賭博疑惑の件。ドジャース球団は,それが発覚した時点で彼を即刻解雇した。恐らく,日本的な判断であれば,「とりあえずソウルシリーズを終えて本国に帰ってから・・・」となりそうなものだが,第1戦が終わった直後に速攻ファイアー。こういうところは情実を挟まない米国流はキビしい。

 それにしても,小林製薬のサプリを信用して服用していた人も,水原氏に全幅の信頼を寄せていた大谷選手や関係者も,それが裏切られたショックはいかほどのものか。とりわけ,命にかかわる危険なものを体内に取り入れてしまった人たちは,憤怒と不安で眠れないかも。大谷選手だって,この先人間不信を抱えながらプレーしなければならないわけで,心中察するに余りある。一体,何を信用し,誰を信頼すればいいのか。ひとたびそれを失ったらどれほど悲惨な結果になるのか─。誰もがそんなことを考えさせられる一週間だったのではないか。

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